SISOC TOKYO 発足セミナー 生体認証の現状とこれから

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セキュア情報化社会研究寄付講座 特任教授
名古屋工業大学大学院教授 梅崎 太造 教授

 はじめに梅崎教授より、専門領域および今後の目標について講演があった。 画像認識および音声認識が専門で、25年前より物理セキュリティの研究を始めている。
本日は、日頃の研究課題および何を目指しているかについて、話をします。

生体認証(バイオメトリクス)

 生体認証は、本人認証を目的としており、「指紋・静脈」「虹彩」「顔認証」などが利用されている。本人認証の方法として、生体認証以外には「所有型(ICカード、鍵、証明書など)」「記憶型(パスワード、暗証番号など)」があり、それぞれ長所や短所がある。生体認証の長所としては、偽造が難しく、貸し借りのできない確実な本人認証ができることである。短所としては、プライバシーへの配慮などがあげられる。

生体認証とは、身体的特徴や動的癖を用いた認証方法であり、iPhoneやGalaxyといったモバイル端末に何億台と搭載されてから、この2,3年で加速的に普及している。

「導入コスト」、「性能(精度)」、「センシング難易度」、「システム規模」などについて、各生体認証方式を比較し、25年前に指紋認証の研究を開始した。

指紋認証

 1860年に世界で初めて指紋が採取されてから、成人してからほとんど変化しないことから世界のほとんどの警察業務で利用されている。入力方式としては、「①スイープ型」「②エリア型」がある。「スイープ型」は、指をスライドさせるため、小型化ができる。スライド式に不慣れな場合、使いづらい面がある。「エリア型」は、指を置くだけで良い。回転や位置ずれに弱い面がある。

センシング技術としては、「光学式」「静電容量方式」「感熱式」など。今後は、「指紋と静脈」や「2D画像と3D画像の計測」などを同時にセンシングすることで多要素認証が可能となり、認証精度をあげてゆくことが考えられる。

指紋認証(マッチングアルゴリズム)

 世界中で普及している、「マニューシャネットワーク法」は、指紋の隆線の端点や枝分かれの点を特徴点として抽出して、それぞれの配置位置、その結ぶ線の間を通る隆線の数、2つの辺の角度などを調べて本人認証する手法である。
一方、25年前に私が提案した「周波数解析法」は、簡単に言えば、指紋画像の中には、「指紋らしさ」と「個人性」が入っており、ほとんどの場合、指紋らしさの情報が強すぎる。「周波数解析法」の場合、音声分析で使うケプストラム分析を使い、いわゆる生体の特徴をピッチ上、個人の特徴を類定し、音の性質だけを抽出する技術を使うことで、指紋らしさをある程度除去でき、「個人性」を強めることができる。

これまでに、第一世代に家の鍵の代用として実用化し、第二世代にモバイル機器に搭載している。

小型エリアセンサへの対応:「極座標サンプリング」

 最近のiPhoneのように、指紋のセンシングする面積が小さくなってきている。本人認証するためには、8点の特徴点が安全であるが、小型センサーだと難しい。そこで提案しているのが、小領域エリアセンサに対応する「極座標サンプリング」である。

マニューシャの点を中心に円サンプリングを行う。サンプリングデータをプロットして、それを周波数解析をすると特徴の抽出ができる。この手法の良いところは、3点あれば、認証率が良くなる。一周するので、回転の「向き」にも関係無い。

「指紋認証」から「指紋識別」へ

 今の個人認証は、「1:1」認証を行っている。今後、「1:N」の照合ができるようにする必要がある。今のところ、2,000人程度が最高レベル。究極の目標として、「1:70億」が出来れば、他人と間違うことがない。どれだけの計算時間や精度でできるのか、研究を始めたところである。

その他、モバイル端末へ組み込める静脈認証装置のお話や、ホログラフィックス3Dプリンタを使ったシートレンズの応用、顔認証の高精度化などの研究内容の紹介で講演を締めくくった。

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